2012年度「パネル討論会」(2012.10.24)

テーマ「術後の生活と再発について(3)━━自分の体験が自分を大きく磨き成長させる」

 グループ討論終了後、南淵先生の進行で、各グループ代表8人の方より討論内容の紹介や感想、質問事項などを発表していただきました。それについて南淵先生より適切なコメントをいただいたほか、質問に対する回答があり、これまでにない充実したパネル討論になりました。その概要を紹介いたします。

 南淵先生 僕はグループ討論を全部回ろうと思ったのですが、北川さんのところでちょっととっちめられたので、ほかのところへ行く気がしなくなりまして、大変申し訳ありません。ではこちらの方からどうぞよろしくお願いします。

他の病気を調べた結果、心臓が悪いということになった

 望月さん 私は静岡から来ました望月と申します。私のところは「その他」のグループということで一番最後のところのグループです。
 結論から言いますと、私たちのグループは最初のきっかけは心臓じゃなかったというんです。ほかの病気から調べた結果、心臓が悪いということになったということで、結果的にはそういうことになったんです。
 どうもしゃべるのが下手なものですから、私の経験をちょっとお話しさせてもらいます。私は今66歳ですが、60になったときに市からハガキが来たのです。健康診断をしなさいということだったものですから。健康診断は3〜4年してないなと思ったのです。自営業をやっていましたので。
 まず、うちの近所のクリニックへ行きました。検査したときに「10日ぐらいしたら、もう一回来てください、心電図とかいろいろ結果が出ますから」と。5日ぐらいしたら医者のほうから電話が来たんです。医者から電話が来るというのは、普通はあり得ないなと思ったのですが、だけどまあいいやということで、家から2分ですから歩いて行きました。すると「うちじゃ対処できないので大きい病院を紹介するから行ってください」と言うことになって、「何ですか」と聞いたのですが、医者は一切何も言いませんでした。
 大きい病院へ行ったら、「あんたは前立腺がんです」と言われました。前立腺がんって一体どういうことだと思いました。その大きい病院でまた全部検査するんです。心電図から全部。それで泌尿器科へ行って帰ってくると、受付の女の人が、「あなたは循環器へ行ってきました?」と言うから、「循環器なんか行かないよ」と返事しました。そしたら「今すぐ行ってください。循環器へ行けばすぐ診てもらえますから」と言われて行ったら、5人ぐらい待って並んでいました。
 向こうで「はい、どうぞ」と言われて、5人を差し置いて一番前へ行っちゃったんです。「あなたはどこか悪いところないんですか」と言うものですから、「別に悪いところはないな」と言ったら、「そうですか、じゃあはっきり言いますけど、あなたはいつ死んでもおかしくないですよ」と言われたのです。それを聞いたとき、「え、何で」と思いました。頭の上にクエスチョンが五つぐらい並んで、「えー」と思ったんです。
 そうしたら循環器の先生が「パソコンの画面を見て」と言われる。パソコンを見たら、上のグラフの下がったところが二つぐらいあったのです。ここで「あんたはもしかしたら死ぬかもしれない」と言われて、「えー」と思ったのです。それで結局、検査入院しましょうということになって前立腺のほうは待つことになって、検査入院を先にやったのです。
 そのときにカテーテルをここからやりました。それをやったときに私の血管がどうも細くて、実況放送になりました。「今、ひじのところを行ってます、肩のところへ行ってます」とか言ったんです。そうしたら心臓の入り口で針を起こしてやったときに、先生方が3人です―カテーテルを入れている先生と、肩を抑えている先生と、こっちの先生と、3回ぐらい向こうで協議して、今日はやめますと言ったのです。
 突然やめますといわれても……。そうしたら針を起こした先生が忘れちゃったんです。こうしたまんま、それでずずずと、いてててとなったんです。それでひじのところへ行ったら針が引っかかったんです。「ちょっと痛いけど我慢してください」と言って、そのときはストレッチャーに寝てるんです。びーんとやられたときにストレッチャーの上で飛び上がったんです。そしたらここの手がぱんぱんに腫れたんです。真っ青になって。
 それをうちの女房が見て、「何これ」と言ったんです。病院のほうは「このまま様子を見ましょう」と言うわけです。うちの女房がそれを娘に言ったら、うちの娘はちょうどこっちの神奈川にいたものですから、こっちにいい医者がいるからということで大和成和病院へ行ったのです。そのときに南淵先生にお会いして、正月4日にセカンドオピニオンを持ってくれば診てくれるということになって、それでバイパス手術を受けたのです。
 退院してから、またこっちの、恐れ多くも天皇陛下と同じような病気を両方ともやりました。それから約1年間、あっちの病院、こっちの病院とずっと行ったのです。
 ちょっと話がまとまらないですけど、我々のグループは結局、最初の結果ではみんな心臓ではなくて、いろいろほかの病気で心電図をやったら、みんな心臓を手術しなければならなくなったということでした。どうもまとまらなくてすみません。
 
                必ず症状があるとは限らない。誰が診ても心臓病という方が珍しい

 南淵先生 ありがとうございました。(拍手)今の話を解説します。症状が全くない、前立腺の治療をやろうと思っていたら冠動脈が非常に悪いということがわかったということです。さもありなん、僕からしますと全然珍しくも何ともないです。先ほど皆さんのお話をお伺いしたときに、自分もこうですけどこんなもんですかとか、みんな聞くわけです。人それぞれです。全く症状がない人なんてざらにいるし、症状もそれぞれです。
 先ほど申し上げましたけれども、のどがつかえる、左手がしびれる、歯が痛い、胃が痛い、目まいがするとか、自分がそう考えている。人間というのはやっぱり自分が感じているその世界、観念の世界に生きているわけです。体で実際に何が事実として起こっていようが、脳がどう感じるかだけの問題です。体のいろんな異常を脳が感じなくても、とんでもないことを言う人、ものすごくユニークに考えても、人とは全然違うような話というのはたくさんあります。歩いていると、足の裏が痛いとかいろんな変わったことをいっぱい言う人は本当にたくさんいらっしゃいます。
 「それを手術したら治りますか」と聞かれても、「いや、そんなことを言われてもわからない」と答えるしかない、そんな話を聞いたのは初めてですから。手術すると大概治るんですが、突拍子もない症状とか、そんなことってたくさんあります。
 あと、手術を受けた後も、先ほど心臓弁の方でいらっしゃいましたが、「別に症状がなかったんですけどそんなことはあるんですか」と言うけど、ご自分でそうだったらやっぱりそうなんです。今の方のように、本当に症状が必ずあるというふうには全く限らない。むしろ、だれが見ても心臓病だという人のほうが圧倒的に珍しいと思います。どうもありがとうございました。
 ではどうぞ次の方。グループでどんなお話が出たとか、グループの話を聞いて、自分はこう思っていたけど、こんなことを考えるやつもいるんだなみたいな発見があったら、ぜひお話しいただければと思います。どうぞ。

病院を選ぶより先生を選びなさいというのが共通認識でした

 島田さん 「術後の経過について」のグループでのお話をさせていただきます。僕は島田勝美といいます。術後4年半たちました。バイパス手術、バイパスを3本やりました。その後はわりかし経過は順調で、僕自身はまあまあかなと思っています。
 僕のグループを結論的に申します。皆さんすごく元気です。南淵先生はじめ、成和病院で皆さん手術されていい先生ばかりだったのではないかなと思います。大体術後10年前後の方が多かったのですが、皆さんすごく元気です。その中でも不整脈が出たりとか、あと息切れがしたりとか、たまにそういうのはあるそうです。そんなに大変な、もうどうしようもないというような方はいなかったような気がします。
 皆さんと話し合っている中で、一番感じたのは病院を選ぶんじゃなくて、先生を選びなさいということでした。いい先生に巡り合うようにと。あの病院はいいからあそこへ行けというんじゃなくて、いい病院というより先生個人です。いい先生に巡り合えるように、そういう努力をしたらいいんじゃないかということが結論的にありました。確かにそうだと思います。
 個人的には、僕も心臓の手術をする前は病気なんて全然関係ないと思っていたのです。手術してから薬のせいなのかよくわからないんですけども、不整脈もたまに出ますし、息切れとか、動悸とか、ふらつきとか、目まいとか、ちょこちょこ起きるのです。たまたまそこに徳田先生がいらっしゃるんですけれども、術後3カ月、徳田先生の心臓リハビリを受けました。
 そのときに徳田先生からも言われたんです。「1日1万歩、歩け」と言われてね。それは週に2回ぐらいですけど、いまだに多少目まいがしても行くように、それだけは努力してやっています。そういうことができるんだから、まあいいのかなとは思っているんです。

医者の名前を覚えていただくことは医者にとっても嬉しいことです

 南淵先生 どうもありがとうございました。楽観的だったグループということで、皆さん、O型だったんでしょうか。非常にありがたい。もう一つありがたかったのは、病院を選ぶんじゃなくて医者を選ぶということですね。これは僕だけじゃなくて、全国のお医者さんはみんなうれしいと思います。やっぱり病院を代わったりとかする方もいらっしゃるし。あと、医者も紋切り型の不親切な人もいるかもしれません。でもお医者さんは名前を覚えていただくというのは、医者にとってもうれしいことです。
 さっきいろんなグループに参加したときに、「あなたは今、どこの病院のだれにかかっているんですか」なんて聞いたら、「誰だっけ」なんて、「それはアウト」とか言いましたけどね。それはいきなり聞かれたので答えられなかったということだったんです。今、診ていただいているお医者さんの、せめて名前ぐらい覚えておかないと駄目なんじゃないかと、そういうことです。どうもありがとうございました。それでは次の方、お願いします。

コレステロールを下げるメバロチンをやめたらどうなりますか

 木村さん 私は木村好文と申します。私個人の話になります。私は2006年8月30日に大和成和病院で南淵先生の執刀で手術を受けました。今年で7年目になります。
 私のグループは欠席者も何人かいらっしゃいまして約10人でした。ほとんどの人が心臓のバイパス手術を受けています。9年前にやられたという人が2人です。1人は大動脈の手術もあって、あと1人の方は脳の手術を15年前にやって、6年前に心臓のバイパス手術を2本をやりました。手術歴が短い人は、先ほどお帰りになりました林さんが2年半前にバイパス手術を4本されました。この人は血管を取ったところの近くの骨かなんかで整形外科に通っていると言うことです。
 要するにバイパスの手術をした人が、私を含めて大勢いらっしゃいました。手術後、いろいろと経過年数は違いますが、皆さん順調にいっているようです。私も比較的順調に来ていると思っています。
 あと、薬に関して。皆さんは大体共通した薬を飲んでいらっしゃるんです。例えばメバロチンとかコレステロールを下げるようなお薬です。これを要するに継続していいものかどうかと、そういう個人的に私もその質問があります。
 私の例をとります。とにかく私は南淵先生から、町田市民病院の循環器内科の竹村先生に診ていただきましたら、血液検査の結果、非常に問題があると言われました。これは要するに過去のデータを調べてみますと、やはりここに原因があったのかと思われても仕方がないというのが2点あります。
 それは総コレステロールが男性の場合は130から219のレンジに収まるのが健常者ですが、私は手術2カ月後に血液検査を市民病院でやったところ、何と202。悪玉コレステロールLDLは70から139が男性のレンジですが、何とこれが133・6と。HDLのほうは40から80に対して53。中性脂肪は77。
 このままいきますと、あなたはもう一回バイパス手術を受けなければなりませんよと。「先生、どうしたらいいんですか。食事療法ですか」「食事療法もいいんだけど、この食事療法で下げるというのは非常に難しい。したがってコレステロールを下げるお薬、このメバロチンという薬を投与して」と。メバロチン10ミリ。これを飲み始めて1年後に測ったところ、総コレステロールは202から155、LDLは134あったのが87・6と。今、これは要するに総コレステロールは150以下、147。LDLは75。HDLは60でちょうど真ん中ぐらいです。中性脂肪は64です。
 こういうふうに、これはやはりその先生がちゃんと言っていただいたおかげで、これは薬を止めたら恐らくまた戻るのではないかと思います。皆さん、メバロチンを飲んでいる方も何人かいらっしゃるみたいですが、私の場合は2年半後に町の医者に戻っても構わないというので、心臓病を発見してくださった町のお医者さんに戻りました。今から2年半か3年ほど前に、メバロチンは10ミリから5ミリにしましょうと、5ミリにしたんですけれども、コレステロールは上がらず、むしろ下がる傾向にあります。もしメバロチンをやめたらどうなるかその辺を私自身はお聞きしたい。ほかの人も同じような質問がありましたこれは南淵先生に後でお伺い致します。
 あと運動ですが、先ほど徳田先生にも来ていただいてポイントをいろいろと言っていただいたんです。これも人によってそれぞれ違います。私の場合、狭心症でも労作性の狭心症です。そちらのほうは今のところ症状は出ておりませんので、なるべく1日平均7千歩は歩くというような筋トレもするように努力はしています。
 それからお医者さんの問題です。結局、お医者さんとはいい関係になれということです。手術した先生に診てもらいたいけれども、今かかっている先生に悪いとか、どうしたらいいのかと悩んでいる方もいらっしゃるようですが、具体的には今のところ、これはという問題はないようです。大体こういうところが私たちのグループの話の内容です。

冠動脈CTを1〜2年に一度おやりになることをお勧めします

 南淵先生 どうもありがとうございました。まず薬の話です。メバロチン、リピトール、クレストール、エパデールとか、飲んでも飲まなくてもいいんじゃないか、何も変わりないなと思われるような薬ですね。こういう薬はいくら飲んでも死にはしませんし、100錠飲んだって自殺もできませんので、幾らでも飲んでいただいて結構だと思います。
 ただ、コレステロールの値は確実に改善します。どれぐらいの改善度かというのは人それぞれ違います。それから食事をどういうふうにとるかということで大きく変わってくるし、お医者さんによってもだいぶ説明の内容も違ってくるかなと思います。
 今、お話ししていただいたのでびっくりしたのです。もともとコレステロールはそんなに高くないですね。にもかかわらず、このままだともう一回手術を受けなきゃいけないといのは、何か変な悪いリフォーム屋に引っかかったみたいな話です。唯一、LDLが少し高かった感じです。HDLが57でしたら、バイパスをお受けになる方ですとそんなに低くないです。
 以前手術をやられた患者さん、バイパス手術の患者さんで調べたら、傾向として中性脂肪とHDLが低いということです。HDLの低さというのは40以下が低いということですから、50あれば全く大丈夫です。あと中性脂肪が120以下というのが一番の基準ですが、お話を聞いていると、もともと低いということですね。
 LDLは確かにおっしゃるとおり、100を大きく超えているとよくないのです。ただ、危険な人というのは200、300と平気で行きます。中性脂肪も200、300と平気で行きます。そういう状態ではやっぱり再発も危険性がかなりあるかなと思います。でも、さっき言いましたように、内科の先生によっては一度病気になっていると、そういう常習性があるのではないかというところから、きつく管理をしようとされる方が比較的多いのかなと思います。僕の場合は、逆に常習性があるんだから、これぐらいいいんじゃないのという発想です。だからお医者さんによっていろいろ違うのかなと思います。
 とにかく食事についても、食生活は自分でいろいろ試してみる。必ず炭水化物をやめたらいいというわけではないのですけど、自分なりにちょっと変えてみたら値がよくなったぞということです。でも今の値ですと、おっしゃるとおり、薬のせいもあるかもしれませんが全く問題ないです。
 あと、ずっと飲んでいても、さっきちょっと揶揄したような言い方をしましたが、副作用というのはないです。クレストールというのはすごくよく効くのです。ただ筋肉がこわばるというか、何か変な状況になってくるという合併症がないわけではないので、クレストール以外はずっと飲んでいても全然問題ないです。リピトールも問題ないです。あとエパデールというのは皆さんがちっちゃいときに無理やり飲まされた肝油と同じですから、これもまっく問題ないです。
 シグマートは冠動脈がきゅっと攣縮するような状況が手術の後にあるんじゃないかなということです。あと、手術の前に冠動脈を開く薬を皆さん飲んでいるんですけど、僕の場合は全部止めちゃうんです。シグマートという非常に作用の弱い薬だけを出しています。それだけをお出しさせていただこうかなというレベルなので、止めても平気です。あまり変わらないです。手術直後だけいいかなということです。
 僕の場合は大体シグマートだけは朝昼晩ですけど、ほかは大体朝だけとかで、やっぱり忘れますよね。忘れるし、気になってそれがストレスになります。忘れたら忘れたでストレスになります。だからそれはなるべくやめるようにということだと思います。
 木村さん 朝晩だけで3錠?。
 南淵先生 それは3錠飲めと言われているんだったら、それは処方している医者の権限です。僕的には手術から1年以上たっていたらもう要らないんじゃないかなと思います。症状がないのであればね。あと、大事なことは手術の後に冠動脈を調べるということです。
 この会を10年以上やっていまして、必ずどれぐらいで検査したらいいですかと聞かれます。なぜかというと、当初はカテーテル検査しかなかったのです。カテーテル検査というのは大きなハードルでした。あの嫌なカテーテル検査をまた受けなきゃいけないのかなという気持ちが皆さんの中にあったのですが、その時代は終わりました。
 つまり冠動脈CTというのがあるのです。冠動脈CTは割と気軽にお受けいただけるので、やっぱり調べたほうがいいと思います。何年も検査してないのだったら、例えば症状がなくても、5年に1回ぐらいは受けるべきだと思います。手術が終わって1年とか2年ぐらいでお受けになられたらいいんじゃないかと思います。気軽にできます。特に合併症がひどいと、錠剤は使うんですけど、錠剤を使っても何か大変なことになったという人は一人もいません。痛みというのはないです。
 皆さんご存じのように、カテーテルはなかなか大変です。青あざになることもあります。それとは大違いなので、冠動脈CTの場合はどんどんやったほうがいいんじゃないかと思います。では次の方。お座りになって結構です。

自分を客観的に見て違う立場で考えるとどんなときでも笑える

 菱山さん 紹介だけ立って申し上げます。私のグループは8番、9番の「他の病気との関連について」でお話ししました。
 菱山隆男と申します。いま南淵先生からお話を伺いました。私は薬はバイアスピリンだけは必ず飲んでいます。あとシグマート。3カ月分ぐらい余っています。お昼は飲んでおりません。当初に私が手術したのはもう22〜23年ぐらい前で、東京女子医大で手術をしました。マージャンの最中に倒れて運ばれて狭心症で手術をしました。心臓のすぐ近くのところが90%詰まっていました
 当時、私はゴルフばかり行っておりました。昼間はゴルフ場にいて、夜は午前様でマージャン、土日はどっちかゴルフという悪い生活ばかりしていましたので、病気になったときに女房には何の同情もされておりませんでした。即座に2カ月後に手術をしました。当時はまだバイパス手術は、はしりだったのかもしれません。大体2カ月半、3カ月ぐらい入院していました。
 最初の手術のときに、私は何と11時間かかりました。家族はみんな死んじゃったんじゃないかと思っていたようです。いったんICUに戻ってきたときに、今度は出血が激しくてまた再手術されました。そこでまた止血をして戻ってきたんです。そんな状態で私は全くわかりません。
 翌朝、何度かぽんぽんとたたかれて少し気がついて、ああ助かったんだと思いました。しかし、私はいつも思っているんですが、非常に楽観的なタイプなので、マイクを持つといつもカラオケを歌いたくなりますし、大変失礼ですが、そのときに助かったというよりも、ほかの人が死んでも俺は死なないんだというような不遜な考えを持っていました。これは非常に大事なことかどうかわかりませんけども、ああ助かったんだなと思ったときに、口から鼻から全部、口もきけないし、手も動かせないし、目だけ動かすだけで……。家族は来てましたけれども、そういう状態でだいぶ当時は悪い状況で過ごして元気になりました。
 治ると即座にまた悪い癖が出ました。5月に退院して10月にすでにゴルフをやりました。私はゴルフがハンディ11まで行ったのですが、そのときはめちゃくちゃに悪かったので、これはゴルフが下手くそな人の血液が入っちゃったんだなと思いました。これでしばらくまた練習しまして若干うまくなったんです。
 そのときに先生が、外国の例で20年ぐらいは保証できるだろうと言われました。19年目にちょっと5分間歩いてもまた息苦しくなって、これはやばいな、再発かなと思いました。それでも仕事をしておりましたので、何とかごまかしながらまたよくなるだろうと思っていましたが、とうとう歩けなくなるような状況になって成和クリニックに行きました。そして長橋先生から「この状況では危ないから、明日、成和病院に行きなさい」と言われました。それで成和病院に行きました。即手術という形になりました。当時、女子医大で一緒に手術した僕と同年配の人がやはり4〜5年目に再発しました。その病院で再手術をしようとして開いたら、心臓の胸膜が癒着していて、これは手術できないと、また閉めちゃったんです。そういう状態で、今は私とつき合って元気で何とか生きている人がいます。
 そういう状態でしたので、これは成和病院でもとてもできないな、そのときはそのときでしょうがねえと思いまして行きましたら、「うちにはこれをきれいにはがす名人がいるから大丈夫だよ」と南淵先生がおっしゃいました。先生は忘れていらっしゃるかもしれません。
 そのときに倉田先生が2時間ちょっとかかってうまくはがしていただいて、再手術オーケーとなりました。非常にありがたいことだと思っています。私は最初1本でしたが、まさかと思ったら今回5本ありました。私は両足から全部取る血管はありません。そういう状況の中で3度目はどうだろうと思ったら、3度目は何とかそのくらいはできるようなお話をいただきました。安心やら、そのときはそのときで、私も年輩で男性の平均寿命を過ぎています。これはこれでよろしいと私はそういうふうに思います。
 いつも思うんです。私は病気を持っているけれども病人じゃないというふうに、そんな考えで生きています。いつもいまだに現役で仕事も持っています。今は月に2回程度ですがゴルフに行っています。もう一つ、カラオケが好きで月2回ぐらいやっぱりやっています。そういう状況の中で今は生活していますので、非常にのんきで、ふまじめでだらしのない人間ですが、基本的なことだけは守っています。
 腎臓はがんで1個取っています。尿道狭窄もしました。それから前立腺のがんの初期も持っています。いろんな薬を飲んでいますが、何とか健康、というのはおかしいですが、病気を持っていても健康です。そういう状況で今は生きています。
 先ほどのグループの中でいろんなお話がありました。私よりも大変な糖尿病を持ってらっしゃる、それから弁膜症の手術の後、すぐ破傷風になってしまったという方もいらっしゃいました。脳梗塞になって言語障害がある。ある人は声を出すことがいいことなんだよ、若干運動しなさいとそういうふうなお話もありました。そういう中で高機能障害でうつ病になった方もいらっしゃいました。ただし、その方もある面において前向きに生きている中で、やっぱり最後は人間、笑うことが大事だということをおっしゃられました。私も大賛成です。
 人間としておりますと、過去の経験からいろいろな現実から逃避しようとして、その裏返しが笑いだと思います。私もいろんな形で、今年80歳になりますけれども、一歩引いた冷静さの中で自分を客観的に見て、そして違う立場で考えると、今の病気も、ああ俺は笑えるなというふうに思うことが時々あります。
 これはあまり万人に通用するかどうかわかりませんけれども、私はそういう主義で生きておりますので、ひとつ参考になればと思います。あまり参考にならないかもしれませんけれど、以上、私の今の生き方でございます。(拍手)

病気を逆手にとって元気で朗らかに、楽しく笑って

 南淵先生 どうもありがとうございました。ほかのご病気もあるということで、しかし考えてみますと、ここにいらっしゃる方はほとんど同じような状況でお悩みというか。もともとの心臓病ということもさることながらというべきでしょうか。糖尿ということで恐らくバイパス手術を受けられた方は3〜4割はそういったことも、心配といえば心配ですが、決してそんなことを心配するものではない、逆手にとって元気で朗らかに楽しく笑ってということだと思います。
 しかし、それにしても女子医大で手術を受けて元気に生還されたのですね……。最近はいろんなところからの再手術、やり直しがたくさんあります。女子医大に限らずいろいろな大学病院で手術をお受けになった方々です。2回目の手術ということで、必ず患者さんに言うんです。「大学病院でこんな下手くそな手術を受けて、あなた、まだ生きているんだから絶対に死にませんよ、ほんとに」と冗談を言うと、そうすると患者さんはすごい元気になるんです。
 でも、おととい退院した人は手術が終わってから、「明日、大学病院に文句言いに行く」とかいって、一生懸命止めたんです。(笑)そんな話もあるぐらいです。しかしそんなことができるというのは、元気で、手術が成功した自分の手柄だということもさることながら、やっぱりそれだけいろいろ自分で考えて意欲を持って、「文句を言いに行く」なんてね、これはこれでまた元気だからできることです。
 笑うということが大切だともおっしゃいました。やっぱりそういういろんな感情の起伏は持っていいと思います。「頭にくるな、あのやろう。何とか謝らせてやる」と、これも元気の源だと思います。うちにはそんな患者がいっぱい来ますよ(笑)。
 手術ですけど、カテーテルのできる状況は多々あると思います。バイパス手術しますと、3本、4本、5本つなぎますけど、全部が全部きれいに流れないこともあります。やっぱり心臓の病気、冠動脈の病気というのは全部均等に進むわけじゃないんです。あるいはもともと冠動脈がたくさんある中で、全部が大事というわけじゃないんです。やっぱり一番大事なところがやられていれば、それは何かやらなきゃいけない。ついでにバイパスをつけちゃったところ、まあいいんじゃないのというところが多々あると思います。
 先ほどもお話がありました。例えば血管を取ったところが痛いと。多分、足だと思います。足の静脈というのは3番目に、あるいは4番目に大事なところにつけるんです。1番目と2番目は大概内胸動脈です。でも3本、4本つなげなければいけないから、しょうがないから静脈につなげようということです。静脈ですとあまり重要じゃないということで、静脈が質として悪いからすぐ詰まっちゃうんじゃなくて、まず冠動脈の流れ自体が少ないのです。
 すごく流れているところに、一番大事なところに内胸動脈をつけますから、内胸動脈が育って太くなるし、よく流れる。静脈だと材質として悪いからじゃなくて、あまり重要ではないところをバイパスするということです。後で詰まっちゃってもこのままでいいんじゃないのという話になったりすると思います。
 だから僕も最近、あるいはさっきのお隣のところもそうだと思います。今からお話しされる前に言っておきます。足の静脈を取ったところが痛い痛いとみんなに言われます。「こんなんだったらそんなの取らなくて使わなきゃよかった」と。一番大事な1番目と2番目だけを内胸動脈で、あと3番目、4番目はほっとけばよかったなんて、最近は本当に思います。
 ある意味、静脈というのは本当に申し訳ないですが、皆さん、足を取ったところを何だかんだおっしゃるんです。確かにそれが命を支えている静脈になっていることは多いですけど、そうでない場合もあります。
 いや、昨日の患者さんも実はそうだったんです。大事なところに内胸動脈をつけて、3番目を静脈でつなぐと、あまり重要ではないのに後で文句だけ言われるなというところがあったんです。その辺はジレンマということもあります。手術は手術なりにいろいろ後で出てくるかもわかりませんが、人工弁の場合、機械弁と生体弁なんていう話もあったりするんです。いろんなことは51対49とぎりぎりのところで決断しているところがあるということはご理解いただければと思います。では次の方、お待たせしました。

足の痛みは足を上げて寝る、ストッキングをはいて寝るといい

 根谷崎さん 7番の「後遺症と副作用について」というグループの根谷崎です。代表を決めないでやりましたが、私の声が大きいということでここに座っております。すべてみんな忘れるほうですので、お話の内容もほとんど忘れていると思います。
 いま南淵先生がお話しくださったように、私たちのグループは6人で、お一人はお付き添いの方がいらっしゃいました。バイパス手術の方が一人で、あとは皆さん、弁膜症の手術の方で、皆さん、成和病院で手術をなさった方です。
 いまお話のバイパスの手術をなさった方が、足から取った静脈のところが痛いということで、みんなでいろいろと方法をお教えして。圧力がかかるんですね、先生。それでだんだん太くなったりすると痛くなるということで、みんなで話し合って、足を上げて寝たらいいとか、巻いて寝たらいいとか。ストッキングを勧められるんですが、あれは、はくのがすごく大変です。まず包帯で巻いたりしたらどうですかとか、足を上げて寝たらどうですかというお話になりました。
 ちょうど南淵先生が来てくださったので、ほとんどの質問が全部解決しちゃったような感じでおります。その静脈の方がお一人で、あとバイパスの方は大動脈瘤と弁膜症の手術後、ちょっと左足がしびれるという方がいらっしゃいました。そしたら先生が「もしかしたら頭に飛んでるんじゃないか」ということがありましたけど、お元気ではいらっしゃいます。それからもう一人の方も弁膜症の手術の後ですが、心房細動が最近始まったとかいうことだったのです。そういうことについてもちょっと聞かせていただけたら……。

心房細動は心臓の手術をしていなくても普通の人でも出ます

 南淵先生 皆さんにお話ししたほうがいいかもしれません。心房細動。これは患者さんが退院されるときに必ず言います。心臓の不整脈というのは出ます。心臓の手術をしてなくても出るわけです。退院する方には必ず言っていますが、皆さんは必ず忘れていると思います。
 要するに普通の人でも心房細動は出ちゃうわけです。70歳ですと7%ぐらいの人が普通に、心臓の病気がなくても、手術しなくても、心房細動が起きます。だからベースラインというか、普通に心房細動の確率が上がっている。プラス、心臓弁の病気の方というのは当然心房細動、心臓弁の病気によって直接引き起こされているということです。ただ、先ほどの患者さんというのは心臓の弁の手術が終わって不整脈が全くなくて、数年たって、その後、心房細動。これはもうある程度出るべくして、心臓の弁とは関係なくして出てきているということです。
 心房細動というのは、これも大体皆さんにお話しするんですけど、どんな人も必ず再現することができます。というのは、アルコールを飲んで脱水になって、ご飯を食べないで低血糖に。それからストレスがあったり、睡眠不足、疲れ。するとどんな人でも必ず100%、16歳の高校生でも心房細動を出現させることができます。ということは、だれでも起こるんです。だからそういう病気を遠ざけないといけない。
 もしそういう状況が起これば冷たい水をまず飲む。こういうふうに皆さんにご説明する機会は多いのですが、心臓のすぐ裏が食道です。食道が冷たい。やっぱり温度が下がると心臓って脈拍が落ちるんです。手術中に皆さんは麻酔がかかっているから知らないでしょうけど、手術中に水をぎゅっとかけると大体温かい水が出るんですが、冷たい水をぴゅっとかけると心臓がぴゅっとなります。「ああ大変だ」なんて言ってね、皆さんは気がついてないと思いますけど、そういうことがよくあります。ですから冷たい水で心臓というのは落ち着くんです。まさに何か興奮すると水を飲むと落ち着くというのと全く同じです。
 それから温度が上がる。これも脈拍を上げます。心臓を無理やり頑張らせます。心臓というのは体の中心です。一番温度が高いです。常に一番温度が高い。ここで測ると36度。でも心臓は38度2分ぐらいあります。心臓というのは人間の体の中で一番温度が高いところです。ですから運動をして、あるいは暑いときに熱中症になる。一番温度が高いのは心臓です。
 頭で脳梗塞が起こったりして脳の細胞がどうにかなったというときは、頭の中が44度ぐらい上がると言われています。でもとにかく普段は心臓の温度が一番高い。ですからストレスがたまって不整脈が出てくるというのもそういうふうに説明できることが多いと思います。
 よく使う話ですが、とある都知事に聞いたんです。都議会で銀行についての質問を受けたらしいんです。「そのときはさすがにね、南淵さん、心臓どきどき、不整脈が出たね。あれ、心臓の病気って全部ストレスだね」なんてなことを、あの方でもおっしゃってました。(笑)豪傑のあの方でも、「銀行のことはわかんねえ。あんなことを聞きやがって、俺に答えられるわけねえじゃねえか」みたいなことをおっしゃって、そのときは不整脈が出たと。やっぱりストレスということです。でもそのストレスをもうちょっと詳しく見てると、結構緊張して話して、温度は上がっているんじゃないかと思います。
 冷たい水を飲むと、まさに心臓の近くの胃にたまります。胃というのは心臓が乗っかっているところですから、胃にたまっても心臓を冷やします。反対に今度は冷たいものをあまりむちゃくちゃ飲み過ぎると、脈拍が下がり過ぎて頭が痛くなったり、気持ち悪くなったりします。そういうこともあります。ですから不整脈はだれでも起こるということです。それからお風呂上がりとか、サウナ上がりとか、そういうときは水を飲んだり、あと低血糖――さっきから炭水化物は駄目だと言って矛盾していますけども、皆さん、飴をなめるとか、おばちゃんがいつも持っている飴ですね。大体こんなところでよろしいですか。

手術後に耳鳴りがするようになりましたが…

 根谷崎さん あと、手術後に耳鳴りになった。私もそうだったんです。麻酔の先生から、もしかしたら耳が聞こえなくなることもあると言われていたので、耳鳴りぐらいじゃあしょうがないなと思って私は我慢していたんです。この間、唾液腺が詰まって麻酔をやりましたら、ちょっと耳鳴りがしました。その加減があるのかなという気はします。今、耳鳴りになっている方、年もそうですが、どうなんでしょうか。
 南淵先生 耳鳴りは直接わかりません。でもやっぱり心臓の手術というのは、皆さんには説明申し上げていると思いますが、人間が人間に対して行う一番とんでもない、ひどい侵襲というか、拷問みたいなものです。麻酔がかかっているとはいえ、人工心肺、あるいは人工心肺ではなくても、傷を開けたりして、体というのはとんでもないストレスを受けてますから、今おっしゃったようにそういう傾向がある。例えば昔、中耳炎をやったとかそういう方というのは耳管が詰まりやすかったり、耳の中が腫れたりとか、いろんな影響は出るでしょう。でも手術の後、1年ぐらいたったんだったら、手術のせいにしないでほしいなという気はあります。
 耳鳴り、あるいは最近お話ししました突発性難聴とか、本当に理不尽な状況で起こってくるものがあります。目の病気も何でもそうでしょうけど、やっぱり我々の感覚、いつもずっと使っていますけど、ずっと常に良好な状況で使えるとは限らないというところは多々あります。だからといって、どんなメンテナンス、どんな治療がいいとか、あるいは使い方をしたらいいのかということは、なかなか言えないと思います。
 ただ、さっきの血圧はやっぱり耳鳴りとか、あとじんじんするとか、おなかがどきどきするとかということにはつながっているのかも知れないです。ひょっとしたらそのときに血圧がめちゃめちゃ上がっているのかもしれません。

インフルエンザの注射は毎年受けたほうがいい

 根谷崎さん 私は先生から約8年前に弁膜症の手術をしていただいたんです。3日目にインフルエンザになっちゃったんです。それで病院第1号と言われたんです。前もってインフルエンザの注射をしてくればよかったねと言われたので、私は昨日インフルエンザの注射をしてまいりました。それからずっとインフルエンザの注射は毎年受けています、ということです。
 南淵先生 「風邪は万病のもと」ということで、今もそろそろ出回っていますので、ぜひ皆さん、インフルエンザの注射をしてください。やっちゃいけないということはないです。
 根谷崎さん 手術後で大変痛かったので、せきが出てタミフルを飲んだりなんかしていたので大変な思いをしましたので、皆さんもお気を付けください。
 南淵先生 どうもありがとうございました。次の方どうぞ。

再発予防策はいろいろ。生体弁はどのぐらい持つか?

 宇田川さん 宇田川です。私たちのグループは7人で討議をしました。この「再発について」というのをどう理解するかというと、私たちの話の中では心臓病を再発しないために自分たちでどんな防止策をすればよいかというような観点から話し合いました。7人の中で、バイパス手術、生体弁の弁置換、それから中隔欠損の手術等の中で集まっての話です。
 まず防止策としてはいろいろ指導を受けていますので、そういう認識がかなりすり込まれております。まず精神的な部分の中では、先ほどもどこかで出たと思いますが、笑うということによって笑顔をつくるということ、それから手術を皆さんやっていますので、やっぱり生かされているという感謝の気持ちを忘れないようにするというようなこと。
 それから楽しみを持つ。旅行等、趣味を持つというような観点が多くの意見として出ていました。あと体を動かす部分ではラジオ体操を行うということ、それから毎日、散歩をするという部分の中で時間を目標にしている人、歩数を目標にしている人とそれぞれありました。それから趣味の中では農作業を行って体を動かす、エアロバイクをやる。それから呼吸法です。ロングブレスというんですか、何々式というのがあるそうですがそういうようなものを取りいれてやるということです。皆さん年齢を重ねておりますので、骨が丈夫になるための、これもテレビでやっている部分もあるかと思いますが、骨骨(こつこつ)体操を毎日15分ぐらい行うという意見が出ました。
 あとは先生にお聞きしたいのですが、生体弁はどれほどの期間もつのかということですが、いかがでしょうか。

生体弁は20年以上持ちます。20年でやり直しは1件です

 南淵先生 どうもありがとうございます。まず生体弁です。大体20年ぐらいはもつということですが、もっともつと思います。これは別のグループのところでもお話ししましたが、生体弁のやり直しをやらせていただいたのは今年の5月に1件、20年やってまして初めてです。ですから600個ぐらいの中の1個です。実は機械弁のほうが、やり直しが多かった。4〜5個をやり直しです。どちらも弁が壊れたからじゃないんです。弁の周りの組織、肉がはみ出してきたということでやり直しになりました。そういうこともありますので、絶対に大丈夫というふうには言い切れないと思います。
 先ほどの方と同じですが、楽しく笑顔でということはすごく大事だということですね。それからどうなっているかを調べるということです。非常に僣越ですけど、イマヌエル・カントの行動様式の中に三つあります。1番、我々は何を知ることができるのかと考える。2番、我々は何がそれに対してできるのか。3番、それは正しいことなのか。本当にとってつけたような言い方ですけど、皆さんの再発ということを考えたときに一番基本となることです。さすがにカントですね。すばらしい行動様式じゃないかと思います。
 何を知ることができるか、将来どうなるだろうと、こんなことは誰にもわかりません。知ることができないものを何だかんだ調べようと思ったって無理です。でも少なくとも今はどうなっているかというのは知ることができるわけです。人工弁の問題にしてもそうです、冠動脈の問題にしてもそうです。先ほどおっしゃったような血液のコレステロールの問題にしてもそうです。今、知ることができるわけです。だからまず知ることができることを知るということです。それが一体何なのか、どうなっているのかというところまで知るということです。
 次にそれに対して何ができるのか。例えば先ほどの薬を飲むというのは手っ取り早い方法ですが、さっきのリピトールを飲むこと。これは何ができるかという、できることです。それから先ほどおっしゃった、ずっと飲んでいていいのかという、まさにそれが正しいことなのかという疑問のところまでいっているわけですね。薬を飲んでコレステロールうんぬんというところは、そういうことで手が届く範囲ですが、冠動脈にしろ、弁にしろ、まず超音波やあるいはカメラCTで見たり、あるいはいろんな検査をしたりして、見てそれがどうなのかということをまず知って、それからどうなっていくのかということではないかと思います。
 最後に質問をいただいた生体弁うんぬんということもそうです。人はそれぞれ違うわけです。だから自分は5年前に入れたんだけど、どうなのか。「あれ、人と比べてちょっと違うように見えますね。全然問題なく動いてますけど」なのか、「これは全然問題ない。入れたときと全く同じでよく動いていますよ」ということなのか。そういうことを知った上で、じゃあこの後、15年もつのか、20年もつのかということの考察に入るという気がするのです。そんなふうに思います。では次の方。

健康法は食事や運動、短歌、俳句、飲み方の工夫などさまざま

 Aさん 私たちは「健康法について」をやりました。考心会の幹事の佐藤さんとリハビリの徳田先生が加わってくださってやりました。皆さんはバイパスの手術、大動脈弁、僧帽弁、それから心房中隔の欠損とかそれぞれさまざまでした。
 食事とかについても、納豆は食べてはいけないとか、大丈夫だとかいろいろありますが、皆さんおっしゃられていたのは食事については注意していますし、あと運動についても皆さん心がけていました。さまざまで軽い運動をする人もいれば、ジムに週3回通っておられる方もいるし、中には猫の散歩ということで散歩をしておられる方もおられました。
 その中で短歌をたしなんでいる方がいて、そういうのも非常にいいと思いました。経済の仕事をしていて、皆さんの前で話をするときに最後は短歌で締めくくるとちょうど余韻を残してうまく収まるということも教わりました。
 あと、誤嚥性の肺炎というのを皆さんは心配しています。これは前、この会で、飲むときは右の上のほうを飲むと食道と気管支の関係で、気管支のほうを抑えてくれるという、食道だけ通るようになるということを言われて、皆さん、それは結構実践しています。話の中でそれが習慣になっていて、皆さんと一緒に飲むときに真っすぐ飲んでしまって、普段は右を向いて飲んでいるので、大丈夫だと思って飲んで思いっきりむせてしまったとかいう話もありました。それぞれ皆さん、いろんな体験を通して健康法についてやっていました。
 その後、徳田先生のほうから、皆さんの話を聞いた上で、バイパスの手術をした人については20分以上の有酸素運動をやったほうがいいと言われました。これについては、ウオーキングなどは会話をしながらぐらいのペースで、要するに無理をして若い人のように歩くのではなくて、そういうような運動を、できれば週3回以上やるといいだろうということです。
 それから弁置換術。弁の手術をした人については、心不全、筋肉の線維がだんだん変わって、要するに弱くなってきているので、疲れにくい筋肉に代える。そのためにはタンパク質をとったほうがいい、筋肉のトレーニングもやったほうがいい、雨の日だったら屋内でやる運動もいいでしょうということです。例えばプールの中を水中でウオーキングするというのがありますが、ああいうのも無理をしないで大股でゆっくり歩く。これがいいそうです。そういうことで食事も楽しんで、さまざまな運動も楽しんで、生きていることも楽しんでいくということが大事だというお話でした。
 最後に私の場合です。大動脈弁で手術したのですが、退院して、当時は団地に住んでいたのです。団地の外まで歩くことも苦しくて引き返してくるというところから始まって、ウオーキングを続けて公園までたどり着いた、公園を1周してきたと、そういう形でずっと自分で動ける範囲を広げていきました。その後、私は仕事もしていたのですが、あるきっかけで俳句を始めました。その後、詩吟も始めました。
 先ほど南淵先生の話で、いわゆる中国思想というかそういうものが非常にいいということを言っていましたけれど、私も漢詩とか唐詩からいろいろ学んでいることが多くあります。また俳句など、土手なんかを散歩していても、鳥のさえずりとか、それこそネコジャラシとか、そういういろんな草花まで名前を覚えたり、それをまた楽しんで歩いて、また1句詠んでみるというようなこともやっています。そういう形で皆さんと同じように健康法ということを焦らずにのんびりとやっています。
 私も先ほどの人の話にまねして、最後に1句、私の句を紹介して終わります。「父母の 声 聞きに行く 秋彼岸」。これは今年の秋につくった句です。以上です。(拍手)

自分の体験が自分を大きく磨き成長させる

 南淵先生 本当にどうもありがとうございました。今のお話を聞いていますと、当初は大変にご苦労をされて、どんどん体が元気になっていくという自分の中の体験ということで、やはり人間というものが大きく磨かれるというか、一段も二段も高いところに行かれたと思います。
 しかし、考心会のアンケートで、僕自身が頼んで吉村さんに入れてもらった設問の中に、「心臓の手術を受けて皆さんは人間が大きくなりましたか」というのに答えていただいたら、多くの方は「あまり前と変わらない」なんて。(笑)これは謙虚だったんでしょうか、ちょっとわかりませんけど、やっぱり僕は確信します。僕自身医者で、医者というのは物理的に患者さんのそばにいますけど、本当は気持ち的には一番遠いところ、正反対にいると思っています。
 そういう患者さんを見ていまして、いつも感心させられます。すごいなあと思います。退院していくとき笑顔で退院していくなんていうことはむしろないんです。退院してどうなるんだろうという、退院するときのほうが不安であったりする方も結構いらっしゃるのです。退院してこの世の中へ入っていって、特に男性で仕事を持っていらっしゃる方は、どうなるんだろう、職場でいじめられるんじゃないかみたいなことで、そうは思ってないかもしれませんけど、そういう思いというものはいつも自分とは届かないものであるなと思っているのです。今、そういうお話を聞かせていただけたなという気がします。
 ちなみに短歌と俳句は全然違うようです。僕も最近は、今日お配りした「暮らすめいと」の心臓12話Fのところに書いてあります。俳句のほうが余韻を残すということで、短歌は五七五七七で全部言っちゃうんで駄目ということを黛まどかさんがおっしゃっていました。
 俳句はとにかく、「何だ、それで終わりかよ」みたいな、そこからちょっと聞きたいなというのが俳句はいいそうです。黛さんに聞きますと、好きな男がロンドンに出張になるというときに、空港まで行って会わないで陰で忍んで見送るというのが俳句と、男にロンドンまでついていくというのが短歌だというわけです。
 俵万智さんは同じ年だそうです。たまに宴会するとか言っています。じゃあ俵さんはそういう女ですかと――俵さんはご存じのように短歌の方ですね。お二人の仲はいいんでしょうか?(笑)。そんな逸話があったりします。そんなことでどうもありがとうございました。それでは最後です。

バイアスピリン、シグマートで副作用があるのですか?

 Bさん 私は1番の「術後の経過について」ということで、10人の名前が挙がっていたのですが欠席される方が多くて、2班のほうから2名借りまして、ほぼ最初から崩壊状態で始まりました。6人でございました。司会者を決めずに始まったものですから、最後はゴルフの話とか、温泉はどこがいいとかそういう雑談に流れました。
 心臓弁の置換の方が3人、狭心症、ステントを入れられた方、ペースメーカーが2人、私はバイパスだったのです。あまり時間がないので、特に私たちのグループでは結論めいたものはありません。
 私のことを申し上げます。8年前、南淵先生から手術を受けました。その後、成和クリニックのほうに毎年行っていました。先ほど南淵先生がおっしゃいました、マルチスライスCTが早く入ったものですから、それを毎年受けていたのです。去年は心臓の専門のお医者さんがいなくなったので、私はサボって行きませんでした。今年、急に目が悪くなりまして目の手術を受けるということで、その前に心臓のほうは大丈夫かということで一応検査を受けておこうと思いまして、成和病院の菅原先生のほうでカテーテル検査を受けたのです。
 ここで南淵先生にちょっとごまをすっておきたいのです。私の心臓を菅原先生が見ていまして、胃から引いた動脈が見事に流動しているとのことでした。「こんな素晴らしいバイパス手術を見たことがない」としきりに感心していまして、助手についている方々に寄ってこいとかいって見せていました。それで普通は20分ぐらいで終わるところを1時間かかりました。そういうことで参考になれば私もいいなと思ったんですけれども、とにかく検査を受けました。
 菅原先生がおっしゃってくれたことは、私は3本のバイパス手術をやりましたが、その1本はかなり早くから詰まっている、あとの2本は非常によく流動している。今までは詰まっていることを頭の中に置いて生活していたのですけれども、「あなたの心臓は見事だよ、うまく手術はできている」と言われた途端、非常に元気になりました。これはやっぱり物の考え方一つで気持ちが随分変わってくるんだなということをしみじみ感じました。
 一つ、南淵先生に質問があります。手術をした方はたいていバイアスピリンを必ず飲んでいるわけです。私の場合はバイアスピリンとシグマートを飲んでいます。その副作用として、頭痛がするとか、胃痛がするとか、胸の圧迫感を伴うとか、そういうことが必ず書いてあるわけです。私は気が小さいものですから、そういうことに引きずられて、そういうような症状がずっと出ているんです。これはノイローゼから来るのか、これは難しいと思いますけれども、薬の副作用から来るものなのか、その辺を心の整理をつけるために助言をいただければと思います。以上です。

効き過ぎの副作用、関係ないところで出る副作用とがあります

 南淵先生 どうもありがとうございます。まず薬です。先ほどもちらっと出ましたけど、シグマートです。恐らく5ミリグラムを1日3回。シグマートは1時間ぐらいしか効いてないです。非常に少ない量だということと、早く分解されるということで、あまり副作用はないのではないか。ただ、効いているときはどうしても血管を広げますから頭痛を呼び起こしたりする可能性はあると思います。
 バイアスピリンというのは何の副作用もない。量も少ないですし、アスピリンというのは100ミリグラムです。500ミリぐらい、5倍ぐらい飲むと胃潰瘍になるということもあり得ますけど、1日1錠ぐらいであれば問題ない。よく歯医者にかかって、アスピリン止めていいですかと言う、出来の悪い歯医者だと思いますが、必ず何かの質問が来たりします。アスピリンぐらいでそんなに出血しやすいということはあり得ないです。また安い薬なので、アスピリンのほうは問題ないと思います。
 シグマートというのはさっきから言っているように気休め的な薬です。だからそういう副作用があまりあるとは思えないのです。でも、シグマートというのはいい薬で、KATPチャネル阻害剤といいまして、心臓の筋肉がいったん収縮して、今度は弛緩してふにゃっとなる、そのふにゃっとをなりやすくする。それから血管の緊張、特に冠動脈の緊張を取るという作用があります。割と人にもよるんですが、僕なんかが好きな薬です。皆さんのバイパス手術のときは静脈内注射をして、それに対するアレルギーとか副作用というのは起こったためしが今のところはないのです。
 あと、冠動脈の薬で、1日1錠で冠動脈を広げるような、亜硝酸剤、アムロジン、アダラート、そういう薬というのは長く効いているというので、それで頭痛が長引くと、やっぱり1日ずっと続くような頭痛なのかなと思いますし、また便秘も起こりやすいです。
 特に変な副作用というのはあまりないと思います。効き過ぎというところの副作用というか、直接的な副作用というのと、全然関係ないところで変な症状が出てくる副作用と2つあると思います。そういう点で全然関係ないということの副作用というのはないです。
 時間も押しているので、ここで徳田君にも参加していただいたので、徳田君が何か感じたこととか、皆さんに共通したこととか、ぜひこんなことを勉強したとか、こんなことを知ってほしいとか何かあれば、うかがいたいと思います。

もうけものの人生をもっと楽しく有意義にしていただきたい

 徳田先生 私は3班に足を運び、お話を聞かせていただきました。共通しているのは皆さん、自己管理について非常に厳密になさっていることです。特に運動や食事に関しては申し分ありません。ここにいらっしゃっている皆さんは基本的にあまり運動でどうのこうのというよりは、もっと楽しく、おもしろく、おかしく生きていただきたい。死んでもおかしくない病気だったし、命を取りとめたというところで、ある意味、もらった、もうけものの人生だよと、よく患者さんにも言われるんですが、そういった意味で楽しく生活をしていただければ、段々有意義な人生を送れると思います。(拍手)

お一人お一人が健康管理を私たち以上に良く分かっていてびっくり

 南淵先生 では次に深津さんにもお話をいただきたいと思います。僕はいろんなところの講演に呼ばれて必ず言うんです。やっぱり男と女というのは違う世界で生きているのです。脳が違います。構造が違います。言葉をしゃべっていても同じ意味ではないのです。男性同士の話というのは割と話が通じるんですけど、女性の言っていることがよくわかんないということは、非常にわかっているつもりでも勘違いとかがある。そこでぜひ深津さんにも感じたことを仰っていただきたい。
 深津さん そんなことないです、先生。本当に全然そんなことないですよ。徳田さんが今言っていたように、皆さんお一人お一人がご自分の食事だったり、運動の仕方だったりというのを私たち以上によくわかっていて本当にびっくりしたぐらいです。病気をしたことがちょっとでも片隅にあると、いつもいつも気を付けているので、自分の体に無頓着な私とか先生とか徳田さんのような人たちよりも、病気をしたことで自分の健康にもっともっと気を付けていただいているところですごいなと思います。大変だったけれども病気をしたことの意味がそこにあるのかなと感じました。(拍手)
 南淵先生 こういう形でいろいろ自分の意見を言うというのは、一方的な講演をするよりも結構受けますよね。受けるので、ぜひこれを何回もやりたいなということでやっています。今回はこうやって、皆さんが前に出て話すということで、まとまりはついたほうじゃないかなと思います。先ほどの皆さんの話にも出ていましたが、患者さんの手術後の生活は、朗らかに楽しくやるのと同じで、やっぱりこういう会もぜひみんな一人一人が「よし、おれが盛り上げてやる」というような形でご参加していただける方が多ければ、またそれなりに盛り上がるかなというふうに思ったりします。本日はどうもありがとうございました。(拍手)

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