不安度テスト 南淵明宏(大和成和病院心臓外科部長)

     心臓手術周辺の不安心理と手術によるphysicalな影響との関連調査
 5月20日の考心会総会では、患者様の「不安度テスト」を行なわせていただきました。最近、心臓手術という大手術を受け、元気になったにもかかわらず、睡眠薬に依存したり、生きる気力を失ったりと、「心を病んでいる」まま放置されがちな患者様がいらっしゃることに気がつきました。
 恥ずかしながら、心臓外科医として心臓しか気にしていない私は患者様の「睡眠薬をください」という訴えに、気軽に「ハイよ」と処方するといった安易な態度でした。
 人間の心の奥底に根を張る不安は、時として大変厄介なものです。私自身も重症患者の手術を前に不安で不安で眠れないことがあります。
 現在のわが国の医療環境では、人材の不足(人数は余っているようですが)と医師社会の縦割のシステム、さらにはすでに身体的に明らかな疾患が認められる、たとえば心臓手術後の場合、「おそらく心臓病が関与している、あるいは治療中に心臓病が再発したら大変だ」とかいう理由で、心の病の専門家にもまともに診てもらえないのではないかと思います。
 そこで、大和成和病院心臓外科では、まず患者様の実態調査を行ない、今後系統的にアプローチして医学医療の進歩に役立てていこうと考えました。
 結果は下記に示すとおりです。性格によって他の回答にどういう傾向があるかなどさらに分析する必要がありますが、結論的に言って、不安にさいなまれていると答えた方は特に高い頻度であったとはいえず、ある意味ではホッといたしました。私達が手術させていただいた患者様がみながみな不安で不安でしょうがない、というのであればそれは大変に悲しい現実であったからです。
 心臓手術前後の不安心理については英文で数多く報告されており、実態の掌握の後、さらに合理的なアプローチを加え、研究を実施することにしております。
 不安度テスト結果
 回答者99人(男性79人・女性20人)
(1)あなたは不安ですか。
「はい」28人、「いいえ」71人。
(2)何があなたを不安にさせますか。
「病気の再発」「薬の副作用」
(3)睡眠薬を飲んでいますか。  
「はい」15人、「いいえ」84人。
(4)抗不安薬(デパス、セルシン、リーゼ、セディールなど)を飲んでいますか。
「はい」6人、「いいえ」87人。
(5)夜はよく眠れますか。
「はい」86人、「いいえ」13人。
(6)眠れない理由は何ですか。  
「病気の再発など」
(6)朝早く目がさめますか。
「はい」76人、「いいえ」21人。
(7)自分の性格をどう思いますか。
「几帳面」「楽天的」
(8)仕事や日常のことにやる気がない、意欲が湧かないと感じることがありますか。
「はい」26人、「いいえ」72人。
(9)生きているのがつまらない、意味がないと思ったことはありますか。
「はい」6人、「いいえ」91人。
(11)将来のことを考えると不安がつのり、イライラしたり悲しくなったりしますか。
「はい」14人、「いいえ」84人。
(12)親身になって悩みを聞いてくれる家族や友人がいますか。
「はい」98人、「いいえ」1人。
(13)不安を取り除くためのカウンセリングを専門家に依頼したいと思いますか。
「はい」7人、「いいえ」90人。
(14)あなたの手術は何ですか。 
「バイパス手術」84人、「その他」14人。
                  (2001年5月20日・総会で実施)