2002年11月3日講演会にて(藤沢市民会館)

ガンにならない体質づくり

医食同源でガン予防

松井 宏夫

 
医学ジャーナリスト新聞・雑誌で数多くの連載を続け、TBSテレビ『おはよう!グッデイ』の「快体新書」に出演中。著書に『ガンにならない体質づくり・80の予防法』(主婦と生活社)

 みなさんこんにちわ、松井でございます。私は最近、『ガンにならない体質づくり―80の予防法』という本を出版しました。今日はこのテーマでお話をしてみたいと思います。
 心筋梗塞というのは、成人病、生活習慣病の3大疾患の1つですが、心筋梗塞の患者はガンにはならないと思っている方が結構います。人間、種の保存ということでは、そんなにたくさん病気になるようには作られてはいません。心筋梗塞で亡くなる方は20万人、ガンで亡くなる方が30万人位です。最近分かってきたのは、心筋梗塞になった方は決してガンにはならないということはありえないということです。
 スキルス胃ガンというのがあります。胃ガンの中でももっともこわいガンです。私がスキルス胃ガンの大家の先生にうかがいましたところ、「胃ガンの患者でも以前心筋梗塞で倒れられた方が結構います。ですからこれから長生きしようと思う方は、ガンにならない体質づくりをしっかり覚えた方がいい」と仰っておられました。
 ではどういう人がガンになりやすいのかと申しますと、皆さんは心臓病の時に、心臓病になりやすい体質があるということを聞いたことがあると思います。アメリカの循環器内科のフリードマンという有名な医者は、「心筋梗塞になりやすいのはA型タイプの人間である」と言っています。このA型タイプというのは血液のA型ではなくて、競争心が強くて、せっかちである、仕事をテキパキやるというタイプです。
 実はガンになるというのもABCと3つの性格に分けて考えられています。A型タイプというのが心筋梗塞になるタイプ、B型というのはA型とまったく逆で、植木等のスーダラ節タイプ、C型タイプは真面目で冷静、合理的で社会の規則を守って他人のために尽くすタイプです。このC型がガンになりやすい性格と言われています。
 英国の精神科医スチーブン・クリアは、C型の人がガンを告知されるとガクッと来て、すべての意欲を無くしてしまうと言っています。ところがA型やB型の人は、ガンと戦ってやろうという前向きな気持ちが出てきますから、なかかなかガンになりにくいと言われています。
 こういうふうに心筋梗塞とガンを考えますと、最もガンにも心筋梗塞にもなりにくいというのはB型タイプです。
 神戸大学の市橋正光先生は、化粧しないで外出する女性は、化粧して外出する女性に比べて、日光角化症になる可能生が20倍も高いというデータを発表しました。オーストラリアは白人ですので、子どもの時からUVカットのクリームをつけることを教えていますが、外出時は必ず化粧する、サングラスをかけるなどをおすすめします。
 アメリカの国立環境衛生研究所の諮問委員会は「電磁波は発ガンの原因になる」という見解を発表しています。最近、朝日新聞に送電線の下に住む人はそうでない人に比べて、3倍から4倍白血病患者がいるという記事が出ておりました。アメリカでこの問題が科学的に発表されたのは1989年です
 家庭の中には電磁波を出す器具があって、よく電子レンジを回しながらそばで見ている方がいますが、これは電磁波を直接浴びているわけですから、決していいことではありません。携帯電話は目の温度を一度位上げます。これが4度上がると白内障になると言われています。ですから携帯電話はなるべく短い時間で使う、コンセントはこまめに抜く、パソコンの前ではエプロンをかけるなど電磁波をブロックする行為が必要です。
 最近、ヘリコバクターピロリ菌というものが知られてきました。このピロリ菌が悪さをして胃ガンを誘発すると言われています。胃潰瘍、十二指腸潰瘍になった50歳以上の方のピロリ菌感染率は80%を越えていますので、もし胃潰瘍、十二指腸潰瘍になりましたらぜひ除菌することをおすすめします。
 ガンにおいては運動がとても大事です。アメリカのブレア博士が研究したのを「タイム誌」が1989年に取り上げました。1万人当たりの死亡者を調べましたところ、全ての死因において運動をしていない人に比べ、散歩程度の運動をしている人はそうでない人に比べてはるかに死亡率が低い。よく運動している人はそれよりもさらに死亡率が低いことが分かりました。
 この調査結果に、後日ブレア博士と学会で対談した福岡大学医学部の荒川規矩男名誉教授は、「運動することが腸のぜんどう運動をよくして、便秘を解消しガン物資が体内に残っている時間を少なくすると言うが、それは違うんじゃないか、免疫力を高めるからではないか」と指摘したところ、ブレア博士は「実は私もそう思っている」と答えたそうです。ですから適度な運動が免疫力を高め、ガンを抑えてくれると思います。
 ブレア博士は適度な運動というのは、ウォーキングを1日30分、これはちょうど汗ばむ程度の運動ですね、これを毎日やって、そして週に1日テニスのようなハードな運動をする、これが最もガンに対して免疫力を高める運動だと言っています。
 最近、笑いが注目されています。これも心臓にいいですし、ガンにとってはNK細胞を活発化し免疫力を高めてくれますので、マスコミでもよく取り上げられています。作り笑いをしていても免疫力は上がります。ですから嫌な人と会っている時でもにこやかに作り笑いをして、免疫力を上げていただきたい。
 ガンにならない体質づくりは食事も大いに関係があります。今高いランクで人気があるのがブロッコリーです。このブロッコリーを週4回以上食べている女性は子宮頸ガンになる確率が低かったというのが米国の研究データから分かりました。結腸ガンのリスクも食べない人に比べて2分の1に減ります。肺ガンもそうです。これはサルフォラフェインという物質が非常にパワーを発揮してくれるからです。
 アメリカでは食材でガンを予防しようと「デザイナーフーズプログラム」が行われています。その中の1つにニンニクがあります。ニンニクにはアリシンという物質が含まれていて、これがガン細胞を兵糧責めにすることが分かってきました。ガン細胞はガンが出来ますと大きくなるために、血管を誘導してその血液から栄養と酸素をとって自分だけ大きくなっていきます。アリシンにはこの血管誘導物質を遮断してしまう作用があることが分かっています。それから納豆ですね。X線がガンを発生させることはご存知だと思いますが、ネズミの動物実験でX線と大豆の関係を調べましたところ、大豆食品が乳ガンを抑制することがわかっています。
 最近有名になったものにバナナがありますが、帝京大学薬学部の山崎正利先生は「バナナは黒い方がいい」ということをガン学会で発表されました。これは黒くなったバナナに多く含まれる BRM様物質がガン予防に効果があるからです。
 色々とお話ししてきましたが、「医食同源」と言う言葉があります。食事と病気の治療は、ともに人間の健康を保つためのもので、その源は同じという意味ですが、この医食同源を踏まえて科学的に裏づけのあるものを上手に取り入れていただければ、ガンは先送り出来て、長生きできると思います。 

(この講演内容は幹事会の責任で概要をまとめたものです)